みなみの備忘録

とあるライブラリアンの備忘録です。

5/27 JOSS2019 ライセンス小委員会セッションメモ

久々のメモ。今年もご縁があり、JOSS2019の企画を担当させていただきました。 

http://joss.rcos.nii.ac.jp/session/0527/

前回:6/18 ライセンス検討小委員会セッションメモ - みなみの備忘録

今回のセッションは、小委員会で作成したガイドライン草案をたたき台に様々な状況下でのデータの利用条件を議論しよう、という趣旨でした。前回よりも実務に近づいた分、非常に具体的なケースからのコメントを多くいただきつつ、「研究データ」の定義やデータポリシーとの関係(ライセンスで制御すべきか否か)といった枠組みにも立ち返って議論がなされた印象。個人的には大変面白かった(聴衆の方々の意向と離れていたら申し訳ないが・・)。
例によって各登壇者のスライドやセッションまとめは後日公開予定なので、ここでは個人的にポイントだった部分を掘り下げる感じで。ほとんど自分用のメモなので、読みづらいと思いますがご容赦を。

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公開/非公開
- データの公開/非公開の境目の判断
登壇者のコメントは、多くがここに重点が置かれていた印象。明言された訳ではなかったものの、やはり窓口及び水際管理をする部署は必須、という共通理解ができつつあるように感じた。現在共有・公開されているデータは、言ってみればコミュニティによる認証(や圧力?)が中心となって進んできた面があり、個別判断を個人に負わせるのは(ガイドラインがあっても)やはり難しい。ガイドラインは窓口・管理担当者の手引書に位置付けていくのが無難かも(もちろん研究者側にやってほしいことは別途抽出していく必要はあるが)。
そのうえで、権利問題がクリアにしやすいこと、条件表示の書き方や問い合わせ対応も含めて豊富な事例があること、が実務的にはカギになりそう。(あとはデータを出してはいけないリポジトリリスト(仮)。いつか見たい。)


- データの種別
取り扱う対象のデータについては、議論の展開も鑑みると
1) 公開が推奨/義務化されるもの(DMPに記載あり、論文のエビデンスデータなど)
2) 公開するとメリットが得られるもの(アクセス数、引用数等)
を仕分ける必要がありそう。スタンスの違いによる議論のずれが、ディスカッションではやや気になった。

 

- エンバーゴ
後はエンバーゴ期間か。「公開しないデータを保存することはあり得ない」という視点から、「廃棄」の選択肢が明確に現れたのにはハッとした。こういう観点でも、アーカイブ資料と同一に考えられるんですね。

 

利用条件
- 多様性
利用条件については、改めて多様な要望があることを認識。「公開」フェーズではデータの性質に依存する面が大きいが、「共有」フェーズで寄託者の意向が強く反映され、それがそのまま公開に持ち越される、が現在の理解。「研究利用」に限定すればある程度は絞れるかもしれないが、教育に使いたい、経済的価値が出てきた、などの要望も研究と不可分なので悩ましい。。。そもそも寄託者にコンタクトが出来なくなった問題も。実態ベースでの整理がやっぱり必要。これは別枠で何とかしよう。

 

- フィードバック
コメントにもあったフィードバックの要望については、後日に某氏と議論した結果出てきたアナロジー※により、「ライセンスの対象にしないほうがよい」という確信を得る。データは公開としても、再利用にはいずれにせよメタデータやデータペーパーによる補完が必要となるはず。そちらの情報をコントロールする方向でフィードバック問題には対応すると良いのでは。


- データポリシーとの関係性
データの公開/非公開や利用条件はコミュニティによる影響を強く受け、それがデータポリシーにも反映してくる。コミュニティの意向が明確な分野であれば個別のライセンスは不要になるだろうし、幅がある(というか関心が薄い)分野であれば個別ライセンスの意義が大きくなる。そのグラデーションをうまく区切っていくのがガイドラインの役割になる・・・かな。

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感想。昨年から何回かの公開議論を経て、「分野の事情」といった大雑把な括りから、もう少し深く考えられるようになった気がする。寄託者の要求も基本的にはデータが活用されることによって応えられると考えれば、もうちょっと共有段階から落とし込むべきなんだろう。ただ、公開の議論と共有の議論、近しいようで関係者のモチベーションが大分違うんですよね。。。

 

※BBSのキリ番コメント強制。あるいは、「本命チョコはルールで縛ってもらえるものじゃない」