みなみの備忘録

とある大学(?)図書館員の備忘録です。

9/7 国際ワークショップ@東大社研(データライブラリアンシップ)に参加しました

東大社研で開催されたデータライブラリアンWSに参加しました。

公開セミナー/ワークショップ | Center for Social Research and Data Archives (CSRDA)

参加人数は30名前後、図書館関係者も結構いた様子。

はじめに、東大の前田先生から趣旨と背景の説明が簡単にあった。
iassistやDSAといった社会科学系のデータコミュニティの話と、最近の動向としてWDS-DSA trustworthy data repositoriesの紹介。「データを扱うようになって、理系と文系の垣根がなくなってきている」という指摘は面白かった。
さて、今回の講演者は米ミシガン大学のJungwon Yangさん。"Data Librarianship"という演題で、ご本人は社会科学系サービス全般に関する責任者とのこと。
ミシガン大学の簡単な紹介に続いて、本題のdata librarianのお話。Jungwonさんの分類では、データサービスを提供するlibrarian(=data librarian)には3種類ある。

・subject librarian/specialists
・geo-spatial analysts/data visualization librarians
・research data management librarians

一つ目、subject librarian/specialistsについて。
業務内容としてはconsultation / teaching, collection management。前職ではcollection managementが業務の80%を占めていたが、ミシガンに移って比率が逆転した。
理由として、コレクション構築はIT技術によってほぼ自動化されたことが挙げられていた。背景にはMARCつき納品の普及なども。
また、ミシガンの場合、州の方針によって図書館が教育を提供する業務を担っているとか(アメリカは連邦制のため、各州によって図書館に関する方針が異なる)。研究者は、教育に関する内容をほぼ図書館に振っているとのこと。
こういった内容を背景に、subject librarianはconsultation / teachingに業務の比重を大きく割いている。図書館が学部学生と研究者の仲介役となるため、(両者に対応することができるスキルという意味で?)2つの学位が事実上必須となっているとのこと。
データとの関わり、という観点では、1990年代から計量的な分析に関する問い合わせが増えてきたため、(問い合わせに対応する、というだけではなく)図書館側からgovernment data分析などのサービスを提供するモチベーションが生じた、とのこと。
subject librarianは、研究者や学生がデータを探しに来た際、専門分野の視点からの徹底的な調査に加え、データの入手にお金がかかる場合は図書館がデータを買ってあげることもあるとか。選書の延長として考えられなくもないが、これは結構驚いた。独自予算の強みだけではなく、図書館に対する信頼の蓄積があることの現れ、ともいえそう。

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二つ目、geo-spatial analysts/data visualization librariansについて。
昨今流行っている(?)データビジュアライゼーションを行っているとのこと。data carpentryという表現をされていたが、膨大なデータをpythonSQLを活用して組織化し、整理し、manipulateするそうな。

アメリカではIT専門家も「ライブラリアン」として活動されているので、実行できること自体は理解できたが、このサービスが「図書館のサービス」としてどう位置づけられるのか、が良く分からなかった。
→ 聞いてみたところ、"we have no limits"とのこと。資金力も能力のある人もいる、という自負の現れだろうが、残念ながら「なぜ図書館がやるのか」という質問に対する回答は得られなかった。
**後で調べたら、このサービスはワークショップの開催、関係するデータ収集のフォローが内容の様子。
https://www.lib.umich.edu/data-visualization
Jungwonさんは「研究・教育支援として図書館がやっている」というニュアンスで話されていたが、(イベント時に出来る人がやっているのかもしれないが)これは流石にサービスの紹介としてはミスリードだろう。**

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三つ目、research data management librariansについて。
「データライブラリアン」と言われる人は一般にこの業務を指すが、本来はデータライブラリアンの一部、という前置きから。まあ「データ」をresearch dataに限定する理由は確かにない。広まった理由としては、NSFやNIHの要求に書かれているからだろう、とのことだった。
research data librarianの役割としては、データ管理計画の策定支援、データキュレーション、データ公開・保存などの業務。また、最近公開したリポジトリのサービスとして、ミシガン大学図書館のデータリポジトリ"deep blue data"の紹介があった。

https://deepblue.lib.umich.edu/data


ただ、リポジトリはあくまでtemporaryなデータ置き場として位置づけており、publishできるものだけを扱う対象とのこと。永年保存はICPSR (ミシガン大学が主導する社会科学系のデータリポジトリ)やその他ドメインサブジェクトリポジトリに置くことを推奨しているそうな。

https://www.icpsr.umich.edu/icpsrweb/


research processの各範囲において、ライブラリアンのスキルを活かせる可能性がある、とのお話で〆られていた。

全体のまとめでは、subject librarianの役割の変化について強調されていた。研究者とresearch data librarianを繋ぐliaisonとしての役割も担っていくことになる、とのこと。subject librarianとresearch data librarianの連携が、データの一次的な利活用→共有、保存、というプロセスを表現することになるのだろうか。

感想としては、以前に聞いたパデューの事例とそう大きな差はない、というのが正直なところ(もちろん日本ではちょっと展開が考えられない規模のサービスなのだが)。逆に、データサービスの特徴を際立たせるためか、全体的に「従来の図書館サービスを超えた」サービスにフォーカスしすぎている点がやや残念だった。質疑でも出ていたが、「研究支援」とか「教育支援」の文脈を離れてしまうと、「それ研究者の仕事じゃないの?」ってことになってしまう。もっとも、下手に線引きして可能性を潰してしまうのはもっとマズいけれども。。。