みなみの備忘録

とあるライブラリアンの備忘録です。

1/25 東アジアデータ・アーカイブ国際ワークショップ参加メモ

久々に外勤&出張が続きました。九大のシンポジウムは追ってまとめるとして、取り急ぎ先週末に参加した東大社研のワークショップのメモを。

・東アジアデータ・アーカイブ国際ワークショップ

https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/international/pdf/20190125workshop_poster.pdf(直リンク注意)

東アジアのデータ・アーカイブに関する国際ワークショップ、ということで中国、韓国、台湾などの担当者が来日していた様子。今回は都合上、1/25(金)の1日のみ参加。ミシガン大学のJared Lyle氏(ICPSRのarchivist)による、ICPSRの評価と認証に関する実践報告があった。資料は下記で公開されている:

Data Repository Assessment & Certification: Experiences and Lessons Learned

=====

以下、内容の概略。

1) ICPSRの背景
 ICPSRの歴史のほか、利用状況やサービス展開の紹介があった。保有しているデータの中には、80,000回を超える引用があったデータも存在するとのことで・・・さすが。ICPSRではデータのライフサイクルに沿ったガイダンスを行っており、倫理審査やデータ管理計画作成のためのテンプレートを提供しているとのこと。

 

2) 評価の重要性と様々な指標の実践
 2013年のOSTP指令や、災害への危機意識の高まりから、信頼性や透明性の向上、手続きの改善、(各種ポリシーやシステムに関して)コミュニティ標準への準拠とともに、ドメインリポジトリの有用性を関係各所に示す必要が生じてきた。ということで、ICPSRでは2005年よりCRL test audit、TRAC/ISO、DSA、WDSなど様々な評価指標を試してきており、その知見を活かして、昨今立ち上がったCoreTrustSeal認証も実践してみた、というところで今回の報告につながる。分野違いのはずだが、WDSまで手を出していたとは・・・

 

3) 各指標の比較(労力とリソースの観点から)
 前述した指標の概要、およびそこから得られた知見の説明があった。労力とリソースの観点からは、CoreTrustSeal認証が、取得に必要な手間(注:必要な専門職員と整備すべきポリシーの両方を含む)が最も少なくてすみ、他の認証よりも経済的とのこと。もっとも、CoreTrustSealが2) に示す要素の向上・改善に役立つかどうかは、さらにこれから検証する必要があるとの補足あり。
ちなみに、CoreTrustSeal認証用の文章を執筆するために要した時間は、Metadata and Preservation Director(つまり彼)が2日掛かりとのこと。他の認証だとこれじゃ済まない(他の関係者の協力だとか追加調査が必要になるとか)、との話だが、まあまあな負担では・・・

 

質疑応答では、評価を取得するために行った実作業やポリシーの整備、ICPSRが使用しているシステムやそのメンテナンス、データおよびメタデータを整備するためにかかっているコストなどの質問が寄せられていた。総じて、役割分担が明確なのでそれほど負担ではない(⇔単純にリポジトリに関わっている人数が多い)という風に受け取れたが、おそらく外部からの目が厳しい分、そうならざるを得ない、ということなんだろう。実践を内外にいろいろな形で示していくことの重要性を再認識(にしても、CTSはもう少し簡単にならないものか・・・)