みなみの備忘録

とあるライブラリアンの備忘録です。

2/28 第4回オープンサイエンスデータ推進ワークショップ参加メモ(前編)

2/28に京大で開催された、第4回オープンサイエンスデータ推進ワークショップに参加しました。
2/28~3/1の日程だったけれども、業務の都合上2/28の一日だけ参加。とはいえ不慮の事態により結局1泊(?)することに。。。
まあそれはともかく、このワークショップも4回目。いつの間にかまとめページができていた。
http://wdc2.kugi.kyoto-u.ac.jp/openscws/
今回はデータマネジメントをテーマに、パデュー大学からMichael Wittさん、シカゴ大学からVas Vasiliadisさんがはるばる京都まで来ていらっしゃった。
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1日目の講演だけだが、簡単な感想を。
村山先生、オープンサイエンス・研究データ共有の国際的な動向について。
内容としては標題の通り、オープンサイエンスの国際動向、特にヨーロッパを中心とした展開のお話だった。
印象に残ったのはEUDAT introduction to metadataのお話。
https://www.slideshare.net/EUDAT/introduction-to-metadata-57336324
EUDATを進めていくに当たって作成した文書の中に、メタデータの書き方、ガイドラインといったものがあるそうな。図書館的に言えば、research data用のコーディングマニュアルみたいなものの様子。

# slideshareの関連ページを見る限り、user trainingやresearch data managementとかもあってかなり充実している模様。

こういった文書類はあまり日本では見受けられないが、本格的に進めていくに当たっては必要になってくるだろう、という、随分と実装レベルに沿ったご提案が新鮮だった。

 

2人目は京大の梶田先生。京大におけるアカデミックデータマネジメント環境構築構想について、というお題で、

「2030年には京大のインフラがどうなっているか?」という問いかけからスタートした。
このくらいのレベルは実現可能で、実現しないと優秀な人材は集まってくれないよね、じゃあ既存のリソースでどう進めていくか、という非常に現実的な見通しを示された上で、人的リソースと技術インフラの統合、研究支援、研究公開、アーカイブといった各レイヤーでの連携の在り方の考察が展開されていた。
実際に動くのは来年度から、という話だったけれども、本気度が伝わる講演だった。注目しておきたい。


3人目はパデュー大学のMichael Wittさん。1年ぶりに再会。
"Research Data Management funder policies in the United States"として、アメリカの助成機関のポリシーの詳細な紹介、パデュー大学での対応などをご講演されていた。
特に強調していたのはOSTP指令の話。

# OSTP : objectives for dataとして10項目挙げられている、と手元のメモにあるものの、今調べたら全然
# 出てこない。。メモのミスか政権の問題か??
# とりあえず下記が出てきたのでこちらにメモ:
# https://www.icpsr.umich.edu/icpsrweb/content/datamanagement/ostp.html

OSTPの説明からの流れで、各機関のData Management Plansに落とし込むまでに
Open government
 → Public access plan
 → Implementation: publications / data
 → Open Access Policy / Data Management Plan

といった要請をきちんと踏まえていく「構造」を明示していたのが印象的だった(スライドでは樹形図)。
それと、"Motivations for PURR"として、libraryの専門性に触れていた。Wittさん曰く、libraryは長期的なstewardshipのため、学術記録としてのデータアクセス保証が、その専門性にかかる問題とのこと。そのためのガバナンスとスタッフとして、IT部門2名、ライブラリー2名、研究支援職2名、ドメイン研究者3名がlibraryに配置されている。役割は、project director、technologists、HUBZero Liaison、metadata specialist、 digital archivist、 repository outreach specialist、 data curator。Key playerは分野特化のライブラリアンとデータサービスのスペシャリスト。体制を組むのに大体10年くらいかかったとか。
質疑では、「日本のライブラリアンは文化的に機関を推進する立場にないが、library professionはどこに持ってくるべきと考えるか?」といった質問が出ていた。
Wittさんからの回答は、ライブラリーの理念の中心となるのは"openness"、誰にでも開かれた存在であるべきという位置づけから、協調、社会への繋ぎ、メタデータなどがprofessionだろう、とのこと。要はハブのような存在、ということだろう。
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以下、Wittさんのご講演についての個人的な感想を。
質疑でもそうだったが、"librarian"の定義がどうもずれている気がしている。
日本だとlibrarian = 大学図書館員なのだが(※1)、海外、少なくともアメリカはlibrarian = libraryに関わる専門職、ということで、研究支援職のみならずIT部門やドメイン研究者ですらも"librarian"になっている。
libraryが物理的な館に紐づいていない、と言い方をしても良いかもしれないが、同じ定義で話すなら、日本でも図書館長をはじめとして専門的なlibrarianはいるだろう。
日本でこの話をすると「海外と比べて」みたいな論調が目立つが、その辺の見せ方も、大学図書館員がハブになって繋いでいけば変わってくるのかも、と思ったり思わなかったり。

(一日にも関わらず)長くなったので2つに分けます。
後編はそのうちに。

 

※1 2017/3/7追記:ご指摘をいただいてはたと気づきましたが、「librarian = 大学図書館員」の文脈について、公共図書館員、専門図書館員を無視した訳ではございません(この話題の文脈で、という意味です)。どなたか不快にさせていたらすみません。。。